アトピー性皮膚炎は乳幼児から老年期まで全年齢にわたる病気で、乳幼児期に発病することも多い病気です。
アトピー性皮膚炎の主症状は皮膚の湿疹ですが、乳幼児期から小児期にかけて食物アレルギーを合併することも多いことから、食物アレルギーも併せて診療していくことが望ましいと考えています。
ところが、赤ちゃんの採血は大人の採血と比べると、血管が細くて位置を視覚的に確認しにくく技術的に難しいため、食物アレルギーを合併する乳幼児期のアトピー性皮膚炎は皮膚科ではなくて、赤ちゃんの採血に慣れた小児科で診療してもらっているケースも多いと思われます。当クリニックではアトピー性皮膚炎の診断のついた生後4ヶ月以降の患者さんには、希望に応じて血液検査を施行する等、 小児期の食物アレルギーの診断・治療に取り組んでおります。
思春期以降は、ダニや花粉・カビ等のアレルギーを中心としたアレルゲン対策や黄色ブドウ球菌対策など年齢や季節に合わせた治療指導を行ないます。
漢方薬治療も健康保険が使える漢方エキス剤を使用して、標準的な皮膚科治療やアレルギー治療に併用する場合があります。
アレルギーとアトピー性皮膚炎について
当院のアトピー性皮膚炎の検査法
1. IgE抗体(IgE-RIST)
アトピー性皮膚炎の血液検査の中心は、IgE(アイジーイー)抗体です。
アトピー性皮膚炎の患者さんの約8割以上は、IgE(アイジーイー)抗体の数値が異常に高いのです。そこで、血液1ml中のIgE抗体の量を測定します。2歳未満の場合、低い数値の測定が出来ないとIgE抗体の量が高いのか、低いのか判定出来ません。そのため、低い数値の測定も正確に測定できる方法を採用しています。
2. IgEラスト法(IgE-RAST)
血液中のIgE抗体がどのアレルゲンにどの程度反応するかを調べるもので、卵白、ダニなど、アレルゲン毎に調べます(アレルゲン特異IgE抗体)。
IgEラスト法の中には、CAPラスト法、MAST法など細かく別れていますが、アレルギーの領域でIgEラスト法の標準はCAPラストであることから、CAPラストを用います。
IgEラスト法で卵・牛乳・ダニなどのアレルギーがあるかどうか(感作されているか)を調べますが、結果は、0~6までのクラスで表現します。IgEラスト法の特性として、アレルゲンの検出感度は高いものの、疑陽性や疑陰性が出やすいということがあります。
当クリニックでは、食物アレルギーについて、IgE抗体の数値とIgEラスト法や臨床症状を検討して、診療を行っております。
年齢によって症状は異なる?
アトピー性皮膚炎は軽症から重症にいたるまでバラツキの大きい皮膚病で、大半の患者さんは軽症です。ごく軽症例まで含めると日本人の10人中2人はアトピー性皮膚炎であると思われます。アトピー性皮膚炎の大変を占めるごく軽症の方々はご自分やご両親ですらアトピー性皮膚炎であることに気がついておらず、皮膚科の専門医に指摘されなければ一生知らずに過ごされる方々が多いと思われます。症状に悩んで病院を受診される方は、その多くが少し重めの軽症か中等症、重症です。
皮膚の症状も赤ちゃんの時期、小児期、大人の時期といった3つの時期による違いがあります。
乳児
赤ちゃんの時期は、顔や耳を中心とした湿疹が中心です。
小児期
小児期になると腕や足、身体のザラザラガサガサした乾燥性の湿疹が目立つようになります。
思春期~成人
思春期以降の大人の時期になると小児期の身体の湿疹に加えて、顔の症状がひどく出てくる場合があります。
どんな時に痒みがひどくなる?
アトピー性皮膚炎の基本となる症状は皮膚の乾燥症状で、冬になって暖房を使い始めると悪化してきます。さらに、夏の暑い時期には汗をかいて、そのケアを怠ると症状の悪化を起こす場合があります。
冬の乾燥症状に対して
充分な保湿と乾燥を悪化させないように入浴習慣の見直しをすることが大切です。
夏の汗に対して
朝晩のシャワー浴の励行をお勧めしています。
花粉に対して
また、アトピー性皮膚炎の多く方々が花粉による影響を受けやすく、中には実際に花粉症を起こす方もあります。アトピー性皮膚炎の程度が中等症以上の場合、風邪などをきっかけに鼻や喉、気管支、肺の過敏症状を起こすことがあり、数は少ないですけど、喘息を合併する方々もいます。アトピー性皮膚炎の診療には、皮膚のみならず、季節や気温、湿度、花粉、食べ物、生理周期など様々な問題が関係しており、花粉症や喘息の合併にも配慮した治療が必要な場合があります。
ステロイド外用剤とアトピー性皮膚炎
平成の年代に入ると、思春期以降のアトピ-性皮膚炎の患者さんの中で、顔を中心に赤く腫れ上がり、大変かゆい湿疹(重症顔面型皮疹)に悩まされる方が急に増加してきました。その当時、急激なアトピーの重症化や難治化はステロイド外用剤が原因だとする説がマスコミを中心に唱えられるようになり、ステロイド外用剤に激しいバッシングがされた時期が続きました。これに対して、日本皮膚科学会が中心になってステロイド外用剤への誤解を解くよう啓蒙努力がされて、ステロイドをいたずらに忌避する患者さんは近年減ってきています。アトピーの重症化の根本的な原因はステロイド外用剤ではなくて、もっと複雑なものだと考えています。健康保険の適応できる皮膚科的治療やアレルギー的治療、そして漢方薬治療を治療選択肢に取り入れています。
当クリニックでのアトピー性皮膚炎の治療
ご自宅からの距離がありすぎて、2~4週間に一度通院出来ない方については、当院での治療をお勧めしておりません。それは、症状をきめ細かく、直接診察させていただかないと、ちゃんとした治療ができないからです。漢方薬治療の場合は特にそうで、一つの処方では時期がくると悪化してくる場合があります。そういった場合にこそ、直接診察させて頂き、悪化した症状に合わせて治療薬を変更したりすることが大切です。遠方から来ていただいた重症アトピー性皮膚炎の患者さんには、当クリニックの治療概略をお話して、診療を納得して受けていただけるかを判断していただくようにしています。もし、治療に通っていただけたとしても長い治療になる場合も考えられますので、ご自身に合うかどうかを判断していただきたいと考えております。アトピ-性皮膚炎には、根本的原因が不明であるために、現在のアレルギー学の知識に基づく治療のみでは、重症度が高い場合なかなか良くならないことも多いです。その場合、治療の主体はアレルギーを起こす原因とは直接関係のない対症療法になりますし、副次的にアレルゲン対策の必要性を考慮することになります。