ニキビ(尋常性ざ瘡・膿疱性ざ瘡)の漢方治療
ニキビの出来る部位や症状によって、漢方薬を選択します。
通常の皮膚科学的治療だけでは、新しいニキビが出来なくなっても、ニキビ跡が残ることがあります。ニキビ跡を予防することも漢方治療の選択理由の一つです。
酒さ様皮膚炎の漢方治療
酒さ様皮膚炎は、副腎皮質ホルモン剤の軟膏を長期使用した経歴のある中年の女性に生ずることの多い病気です。
額(ひたい)、眼の周り、頬(ほほ)に米粒大の赤い出来物が出現し、次第に鼻の頭、鼻の穴の周り以外は真っ赤になって腫れてくる病気で、強い火照りが出てきます。
通常、かゆみや痛みはありませんが、火照りが強いのと顔全体の赤味のために、外出すら嫌がられる患者さんもおられます。
治療目的で、いきなり副腎皮質ホルモン剤の軟膏使用を止めると、症状の悪化を起こします。そのため、抗生剤の内服を併用したり、弱い副腎皮質ホルモン剤の軟膏を使用したりする治療法が一般的で、通常は1年以上の治療期間となります。
この病気は、漢方治療の良い適応です。酒さ様皮膚炎は、顔のうっ血状態ですので漢方医学で言うところの「お血」にあたります。漢方薬による治療は、お血の改善する処方(駆お血剤)を用います。
副腎皮質ホルモン剤の軟膏を長期間使用した後に、酒さ様皮膚炎を起こした場合、通常の治療法では、副腎皮質ホルモン剤の軟膏の軟膏を完全に止めるのは大変根気がいります。通常の酒さ様皮膚炎の治療を受けたのに、なかなか治らないときには漢方薬による治療を選択肢に取り入れています。
掌蹠膿疱症・尋常性乾癬の漢方治療
治りにくい皮膚病の代表である掌蹠膿疱症・尋常性乾癬についても通常の皮膚科学的治療に加えて、漢方治療を行います。アトピー性皮膚炎などと違い、すぐには治療効果が現れませんので根気よく治療を続けていくことが大切です。
帯状疱疹、帯状疱疹後神経痛の漢方治療
帯状疱疹は、ウイルスを抑制する免疫機能が何らかの理由で低下して、体内に潜伏していた水痘ウイルスの再活性化を引き起こすことにより発症すると考えられます。流行性感染症である水痘は冬期に流行するのに対して、帯状疱疹の発症は5月から10月にかけて多い傾向があります。帯状疱疹の重症例(皮疹範囲が広く水疱の程度が重い症例、汎発化症例、疼痛が激しい症例)や帯状疱疹後神経痛への移行が心配される症例に対して、ウイルス感染防御免疫の増強効果を期待して漢方エキス剤を使用しています。帯状疱疹の後に生じる引きつれや潰瘍、帯状疱疹後神経痛に対しても漢方エキス剤を使用しています。
単純性ヘルペスの再発予防に漢方治療
ウイルスを抑制する免疫機能の増強効果を期待して、顔や陰部、お尻の慢性に再発する単純性ヘルペスに漢方エキス剤を使用しています。単純性ヘルペスが毎月1~2回も疱疹が再発する場合に良い適応となります。
漢方治療の対象となる皮膚病
アトピー性皮膚炎、イボ、手湿疹、爪囲炎、ストロフルス、帯状疱疹(後神経痛)、老人性乾皮症(お年寄りの肌のカサカサ症状)、じんましん、静脈うっ滞性皮膚炎、円形脱毛症、しもやけ、多汗症、尋常性白斑、膠原病、床ずれ、皮膚潰瘍、やけどなどに通常の皮膚科学的治療に加えて、漢方治療を行っています。